水と三大穀物と粘土・コロイドを教材に用いた万能の学習プログラム

     水惑星地球
     水惑星地球

偉大な天才(万能人)の特徴は、さまざまな出来事(モノ・ヒト・コト)を我が身の禍福(自己利益・保身)と考えず、それが自分に何を成せ(天命・使命)と命ずるのかと、その神意(自然の摂理)を鋭く深く受け取って、活用していくところにある(利他の精神で教えると育む)これが真の社会貢献である。

 

ゆったりと感性で俯瞰(ふかん)するには、触る・観察する・気づく。瞬時に知性で理解するには、読み・書き・算盤(けいさん)する。

 

メートル(100)からナノメートル(10-9)までの粒径と粘りを瞬時に知性で理解する・ゆったりと感性で俯瞰する

ナノメートル(10-9)水分子とマイクロメートル(10-6)を中心とした微粒子の物理・化学的な相互作用(コンシステンシー)瞬時に知性で理解する・ゆったりと感性で俯瞰する

水と三大穀物と粘土・コロイドの根底(水惑星地球)からの繋がり瞬時に知性で理解する・ゆったりと感性で俯瞰する 

 

 

高度な知性を教える・高貴な感性(センス)を育む 

俯瞰(ふかん)の目(良識)と心(智慧)を、命ある五感で捉える集団

産官学・現職博士らが主催する、ヒトと自然体感観察倶楽部

 

 

 

 

 

 

 

水と三大穀物と粘土・コロイドを教材に用いた

学習プログラム

 

               水 野 克 己みずの かつみ

 

1 はじめに 

 

視覚で理解と確認できる「読み、書き、算盤」の徹底で「基礎学力」が向上する。しかし、「触る、観察する、俯瞰する」の継続で「センスの本能」が芽生える。水・食料問題や環境問題の解決を図るには、ナノレベルまでの数字や数値をスケール感と直感で理解する能力と、次元の異なる世界を俯瞰(ふかん)できる人材育成が急務であり、五感で感じることができない原子の大きさである10-15のフェムトレベルの放射能汚染問題に立ち向かうために、最初に乗り越えなければならない重要なステップである。

 

三大穀物のトウモロコシ粒・米粒・小麦粉と、大地に存在する粘土・コロイド(鉱物粒子)には「水」と「粘り」という共通のキーワードがある。視覚で確認できる礫・砂・シルト(石粉)とトウモロコシ粒・米粒がある。また、素手や舌で触らないと感じることが出来ない粘土・コロイドと小麦粉がある。そして、お粥のような滑らかな粘りや、お餅のような強靭な粘りがあるように、マイクロレベル(粘土)とナノレベル(コロイド)の粘りには、次元の違いがある。

 

粘土・コロイドは、大きな比表面積と陽イオン交換容量を有する薄片状超微粒子である。水との相互作用から「粘り(stickiness)」が生じる粘土・コロイドは、物理的性質(粒径と重量の関係)を眼で観察できる。また、可視化できない電気・力学的性質(水量と体積変化の関係)を素手で体感観察できる。プラズマなど電気エネルギーや熱エネルギーを体感観察すると危険が伴う。しかし、粘土・コロイドとのポテンシャル(潜在的)な相互作用から派生する水和エネルギー(hydration energy)は、「振動しないマッサージ器」のようなモノである。このため、素手で粘土をこね返すことで、身体の奥深くから感じる思考のないダイナミックな快感が得られる1)2)

  

本論は、高校生から社会人までの一般市民を対象にした、水と三大穀物と大地に存在する粘土・コロイドを教材に用いた学習プログラムの紹介である。なお、小中学生以下は親子を対象としている。

 

補助教材として、粘土に相当するカオリンやコロイド(鉱物粒子)に相当するベントナイトや、シリカを原料にした合成スメクタイトや、石油を原料にした吸水性樹脂並びに高分子凝集剤や木材を原料にしたCMC(カルボキシル メチル セルロース) を用いた。

 

2.学習プログラムの課題

 

眼視による分解能は、1/10mmと言われている。しかし、100μm0.0001mなど色々な呼び方がある。そこで、国際単位系のSI接頭辞で表記すると10-4mとなる。ヒトの平均身長は1.7×100mであり、これを基準にSI接頭辞表記では1すなわち100としている。十進数表記で示される0.001はミリ (milli)0.000 001はマイクロ (micro)0.000 000 001はナノ (nano)SI接頭辞では呼び方が定められている。

 

JIS A 1204では、コブル(丸石)の粒径は300mm75mm、「礫 」の粒径は2mm75mm、「砂」の粒径は0.075mm2mm、「シルト(石粉)」の粒径は0.005mm0.075mm、「粘土」の粒径は0.001mm0.005mm、コロイド(鉱物粒子)の粒径は0.001mm以下である。そして、水分子の大きさは3×10-9m、トウモロコシ粒の大きさは10mm20mm、米粒の大きさは3mm5mmである。

 

しかし、レーザ回折散乱法粒子径分布測定による小麦粉の粒径分布は0.000,10.000,002mで、「粘土」の粒径分布は0.000,20.000,000,2mと次元が異なる広がりがある。 

 

1cmの立方体(固体)を微細に分割して1μmの立方体の粒子にすると、個数は1兆倍に、表面積は1万倍になる。1nmにするとさらに桁が上がる。このため、物理・化学的性質などの特性が大きく変わる。文献に頼った経験が伴わない知識では、比表面積2010m2/gカオリナイトなどの粘土と、比表面積600650m2/gのベントナイトなどのコロイドの水和エネルギーの次元の違いは理解できない。

 

まして、国際単位系のSI接頭辞を、通貨の単位で使われる漢字表記で置き換え、1は一、0.001は千分の一、0.000,001は百万分の一、0.000,000,001は十億分の一と、判りやすく表現しても、礫・砂・シルトと次元の異なる粘土・コロイドまでの粒径を、スケール感と直感で理解し、ナノレベルまでの次元の異なる世界を俯瞰(ふかん)することは難しい。

 

3.学習プログラムの概要

 

3.1.粒径と重量の関係

学習プログラムでは、地元で産出される粘土を準備する。ここで粘土とは、工学的分類体系で示される細粒分が50%以上含む砂質粘土やシルト質粘土である。まず、粘土を素手で触り、粘りを何度も体感観察する。水を入れたバケツに、粘土をほぐしながら分散させる。2mm500μm75μmの篩いを準備する。分散させた泥水を、水道水で洗いながら篩いで分級する。2mm以上の礫や2mm500μm の砂、500μm75μmの砂を素手で触り、粒径と重量の違いを体感観察する。

 

篩で礫と砂を除いた75μm以下のバケツに沈降したシルトとブラウン運動で浮遊する微粒子を観察する。礫、砂、シルトには、粘りが無いことを、素手で触って視覚と体感観察で理解する。なお、この体験型学習は、専門的な研究ではない。このため、試験の精度は無視する。

 

3.2.水量と体積変化の関係

粘土をこね返し,水分量を変化させていくと粘土の性状が変化する。水分がきわめて多いときにはドロドロの液状である。さらに水分が多いと粘土は体積沈降する。逆に水分量を次第に少なくすると粘り気がでてネバネバの塑性状になる。さらに,水分量が少なくなるとボロボロの半固体状からコチコチの固体状になる。

 

液性限界が50%前後の粉状粘土(カオリナイト)と、液性限界が500%以上の粉状コロイド(ベントナイト)を準備する。粉状粘土と粉状コロイドの入った容器に、水を入れ練り混ぜ団子状態にする。さらに液性限界付近まで水を入れ練り混ぜる。ドロドロとネバネバとボロボロとコチコチを素手で体感観察する。液性限界500%以上のベントナイトは、教材として取り扱いが難しい。ここでは、粉末Na型ベントナイト(フィロ珪酸塩鉱物)を極性溶媒でインターカレーション(Intercalation)した。

 

次に、カオリナイトとベントナイトを同じ重量比で分散させた分散液を準備する。そして、同じ重量比で高分子凝集剤やCMCを添加混合すると、お粥のような滑らかな粘りと、お餅のような強靭な次元の異なる粘りが観察できる。 なお、カオリナイトやベントナイトなどの収縮限界は1520%、塑性限界は4050%であり、含水比の幅は狭い。しかし、液性限界は100650%まで極端に幅広い1)。このため、塑性限界や液性限界や体積沈降の境が捉えにくい。よって、事前に吸水性樹脂など補助教材として用いて、液性限界と体積沈降の違いを説明補完する。

 

3. 3.粘りを消滅させ「粘りの元」を知る

小麦粉などタンパク質は燃やせば、粘りが永久に消滅する。しかし、粘土・コロイドは、陶器のように約650℃まで焼成するか、磁器のように約1,300℃以上で溶融させることで、永久に粘りが消滅する。これが礫、砂、シルトと本質的な違いである。

 

粘土にセメント混ぜて固化した団子をつくる。石のように硬くなった団子をトンカチで細かく砕き、粘土からシルト(石粉)を作る。また、粘土に塩を混ぜ、粘りが消滅したサラサラとした性状を体感観察する。粘りが消滅した粘土から、「粘りの元」は、汚れのない水と粘土・コロイドの水和エネルギーによる相互作用であることを説明する。また、粘土・コロイドは油も吸着する。コーン油など植物性油脂を準備して、極性が異なる溶媒を用いたベトベトする泥団子を作り粘りの違いを観察する。

 

4. 学習プログラムのガイドライン

 

4.1.学習プログラムとモノづくり

モノづくりとは、モノと技術の相互作用を規則化することである。このため、次元が異なる素材を可視化することで、別の次元で視点を変え考えることができる。土木建設分野における建設機械の振動篩いは、10㎜の礫までである。水処理施設における水洗による篩いも、砂までである。シルト(石粉)と粘土・コロイドはサイクロンフィルターを用いた分級である。粘土・コロイドの存在がフィルタープレスなどの脱水性に大きく影響し、粘土・コロイドの存在が土壌改良や汚染土壌を洗浄する工程で重要な要素となる。農業においては、粘土・コロイドのミネラル分と保水性と気候風土が地産地消文化を育てる要となる。また、数字や数値を直観的に理解する能力は、産業界におけるマクロ経済学のフロー(flow)とストック(stock)を理解する上でも重要なことである。

 

4.2.学習プログラムとヒトづくり

ヒトづくりとは、自然とヒトと生命は水惑星地球という根底から繋がりがあることに、モノとヒトとコトに心を置き換えて気づくことである。石粉を原料にした油粘土しか触った記憶がない方。田植えや泥に浸かる経験がない方。粘土は汚く、気持ち悪い。手が荒れると言われる方。粘土に対して過去に不幸な経験の持ち主には、まず、うどん打ちや蕎麦打ち(蕎麦掻きでも可)や酵母を用いたナン(パン)作りで粘り感じ、水とタンパク質の相互作用による粘りで慣れる。

 

粘土・コロイド、土壌菌、だんご虫やミミズなどの動植物などが、ヒトの健康の害となる放射能など有害物を捕捉し緩衝材となっている。そして、命あるヒトには、代謝によってエネルギー(ヒトの温もり)を生むことに気づく。大地に共に住む動植物などの犠牲の元に人間社会が成り立っていることを語り合い、ゆったりとした時の流れのなかで、楽しく学習プログラムを進めていくことが大切である。

 

4.3. 学習プログラムと言語

英語はラテン文字に代表されるアルファベットが一つの音価を表記する音素文字であるのに対し、日本語の漢字は基本的に、一つの意味(形態素)と一つの音節を表す。粘土や砂などの漢字は語源からイメージできるが、シルトやコロイドなどのカタカナは、意味を知らないと理解できない。

 

累乗の言い方でn(times)10と書かれた英単語では、例えればエレベーターの様に、いきなりダイレクトにn回の階層に思考が到達する。日本語は、例えれば階段を一段一段、モノとヒトとコトを体感観察して10n(回数)の階層に思考がたどり着くことができる。

 

また、日本語は母音を変えたり、子音を濁音にしたりして同じ音を繰り返す擬態語が非常に多い。擬態語とは、モノの様子、コトの状態を音によって感覚的に表現した言葉である。水と三大穀物と粘土・コロイドを教材に用いた学習プログラムは、ドロドロやネバネバやボロボロやコチコチやサラサラやベトベトなど会話が成り立つ擬態語の表現力を高めることができる。このため、日本言語と英語言語の違いを十分に理解した上で学習プログラムを説明する思いやりと配慮が大切である。

 

5. まとめ

 

地盤工学で学ぶ液性塑性試験や体積沈降試験や粒度分布試験を応用した学習プログラム(Science stickiness)は、誰でもが簡単に体験観察できる。しかし、さらに有意義に学習プログラムを補完するには、示差熱重量分析装置、走査型電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)、蛍光X線検査装置など高価な分析装置が必要となる。

研究施設が完備した大学を拠点に、学校担当者や企業担当者を経由して父兄や子供たち並びに企業社員に体感観察ができる環境と組織作りが最大の課題である。

 

学習教材の開発では、財団法人 地域地盤環境研究所、栗田工業 株式会社、クニミネ工業 株式会社、株式会社 ホージュン、MTアクアポリマー 株式会社など多くの企業と関係機関から支援頂いた、謝辞を表します。

 

 

参 考 文 献

1)      水野克己・近藤三二・嘉門雅史(2003):各種ベントナイトのコンシステンシー特性およびその他の基礎的特性に関する研究(総論),粘土科学第43巻,第1号,日本粘土学会,pp.1-13.

2)      水野克己・近藤三二(2001):ベントナイトの特性と環境汚染防止分野への応用,土と基礎,2001,2,Vol.49,No.2,Ser.No.517,

水と三大穀物と粘土・コロイドを教材に用いた学習プログラム
水と三大穀物と粘土・コロイドを教材に用いた学習プログラム
Learning program used in teaching the three major grain and colloidal clay and water
水 野 克 己(みずの かつみ)
Learning_program.pdf
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