図5.9の収縮比と収縮限界における体積比との散布図において,相対的に高い収縮比の群(Aグループ)と相対的に低い収縮比の群(Bグループ)に分類できることを述べた。このBグループに属するベントナイト(S-2,S-4~S-6,S-9,S-10,S-14,S-15,S-17)は遊離シリカとして何れも石英が少なくα-クリストバライトを夾雑しているベントナイトであり,一方,Aグループ(S-1,S-3,S-7,S-8,S-11~S-13,S-16,S-18, S-19, S-20)は石英が多くα-クリストバライトが少ない(または不含)ベントナイトであることを述べた。
ベントナイトが含有しているα-クリストバライトはそのX線回折反射が何れもブロードであることから,結晶不整が大きく結晶子が微小であると推定される。JonesとSegnit(1971)20)はこのような粘土に伴う天然の微結晶シリカは無秩序格子あるいはアモルファスに近いクリストバライトやトリジマイト様構造であり,オパールとして分類している。したがって化学的に活性であると考えられ,A,B両グループから11試料を選び,90℃の1N-NaOH溶液に溶出してくる比色シリカ濃度の時間的変化を測定した。結果は表-5.4に示したとおり,何れのベントナイトについても処理時間が300分の範囲で相関係数が0.990以上の一般回帰式(6)が得られた。
ここに,Sは比色シリカ濃度(g/L),αは処理時間ゼロにおける比色シリカ濃度(比色シリカ濃度の切片値,g/L),βはシリカ溶解速度係数(g/L/min1/2),tは処理時間(min)である。
アルカリ処理試験結果の代表例を図5.13に,またアルカリ処理前後のX線回折パターンの代表例を図5.14に示した。アルカリ処理後のX線回折ではα-クリストバライトの反射が消失したことを確認した。
アルカリ処理試験結果を式(6)で整理して表-5.4に示した。表-5.4のベントナイトに対する可溶性シリカ切片値を収縮限界における体積比および収縮限界についてプロットした図5.14および図5.16から可溶性シリカ切片値の大きいベントナイトほど収縮限界における体積比が大であり,また収縮限界が大きいベントナイト粒子の集合構造をつくることがわかる。
可溶性シリカ切片値と-1μmコロイド分含有量の関係を示した図5.17は,可溶性シリカ切片値の高いベントナイトほどコロイド分が多いことを示している。また図5.18に示す-2μm粘土分および-1μmコロイド分のX線回折結果からブロードで明瞭なα-クリストバライトの反射が認められ,結晶子の小さいアモルファスに近いα-クリストバライトが可溶性の遊離シリカとしてモンモリロナイトとともにコロイド成分となって存在しているものと考えられる。