fSP/f0は収縮限界における試料の体積比に対する膨潤した試料の体積比百分率であり,fL/f0は,同じく収縮限界における試料の体積比に対する液性限界における試料の体積比百分率であるから,それぞれ次式で表すことができる。ここに,f0, fL, fSPはそれぞれ収縮限界,液性限界,膨潤力における体積比,ms, mwは試料及び水の質量,ρs,ρwは試料及び水の密度,Vは膨潤した試料の体積,w’は膨潤力試験の最初の試料中に含まれている水分率である。
上記式(8)の回帰係数2.28は,膨潤力に寄与している水分量は,液性限界の塑性に寄与している水分量の2.28倍であることを示している。定数項絶対値29.7はfSP/f0の 中央値2020に対して1.47%にすぎないが,両者の試験方法の違いによる補正定数と考えられる。すなわち膨潤力試験は試料の水中における静的な沈降体積を測定するのに対して,液性限界は試料を水と十分に捏和して得られる塑性体を機械的に一定の変形を与えることによって達成される動的な試験方法である。
このような試験方法における基本的な相違が,粘土粒子の配向性に一定の差異を発生させているためであろうと考えられる。すなわち,式(8)の右辺はこのことを明確に表しており,膨潤力試験では,ベントナイトのような高塑性粘土からなる土粒子のドメインあるいはアグリゲート間に,コンシステンシー限界試験で得られる収縮限界の体積比に加算される13%のデッドスペースがあると図5.19からいえる。
また,fL = f0 のとき,式(7)式(8)はfSP/f0 = 198 %となる。この値は体積Vの球を内接した立方体の体積が191V%となる関係に近似している。
回帰式(7): SP = 0.04wL + 2.6 を検証する.
回帰式(8): fSP/f0(%) = 2.28 fL/f0 - 29.7 は,fL> f0 において成り立つから
fL= f0 = 145 とすれば収縮限界に対応する膨潤力体積比は
(fSP)’ =2.28×145 - 0.297×145 = 288
(SP)’= 288×(1-w’)/(50×ρs) = 288×0.92/126.7 = 2.1
すなわち,膨潤力試験の試料2g(ただし水分率が0.08)のカサが2.1cm3 である。したがって,一般式は
SP = 0.02×0.92×2.28wL + 2.1
=0.042wL + 2.1 (7’)
となり,回帰式(7)は式(7’)に修正される。左辺の比例係数は膨潤力では水分8%の試料2gが液性限界における試料の含水比の2.28倍の水を拘束することの係数であり,定数項2.1は試料2gの土粒子のカサ(見掛体積)である。